GYPSY QUEEN ROAD TO ASIA 2004
Change
2004/04/28-05/03 


3 熱狂


2004/04/30
7:00起床。久しぶりにたっぷり寝ることができて寝起きも快調。今日は炎天下の中のリハーサルになるであろうと準備も万端。しかし、窓の外は雨。逆に来場者の足に影響が出てしまうのではと朝食を食べながらも少し不安に感じる。8:30にロビーに集合する。新聞には昨日の会見の記事が出ている。重慶ででている新聞4誌に記事が掲載されている。GYPSY QUEENは重慶が恐ろしく好きなバンドだ、ということが書いてある。(痴狂的と書いてあるのだが中国語がわかる人は気にならないが日本人的に考えるとへんな感じだ。ちなみにかっこいいことを「酷(クー)」と表現するがこれも日本だとイメージが異なる漢字だ。)すでにコンサートチケットは6000枚出ているのでかなり盛り上がるだろう。本当に楽しみだ。

よくする心配で、PAは大丈夫か、照明は大丈夫か、機材はあるか、国旗を使うといけないのでは?などなど本当によくある話だ。でも、それをすべてクリアしたから今の自分たちがある。だから余計な心配はしないですべてをステージに注ぎ込みたい。あるものはある。ないものはない。世の中その二つに一つだ。

一行はバスに乗り人民軍の病院に向かう。そう、ここに劉ちゃんのお母さんが入院中なのだ。昨日このことを聞きみんなでとにかくお見舞いに行って元気付けようということになった。そのための早い出発でもある。中国で病院に入るのは初めてでどんな感じだろうと思ったがさして日本との差はなかった。病院の入り口で会った劉ちゃんは昨年と変わらなかったが少しやせていた。いろいろ心労も多いのだろう。病気のほうは楽観しできる状況ではないらしく、かなり深刻な状況らしい。病院の中でお母さんを初対面。お見舞いの言葉を伝えて僕らは病室を出る。劉ちゃんにお礼を何度も言われる。でも、こうしておみまいにくるだけでまだ何もできない自分たちがくやしい。とてもお世話になった劉ちゃんの家族だ。今はただ祈ることしかできない。それが悔しい。軍の病院を出て一行は会場に向かう。しばらく無口だったメンバーからも声が出始める。病院はコンサート会場から程近い。窓を開けていれば声も届く距離。病室にいるお母さんと劉ちゃんに僕らの歌をプレゼントしよう。

10:00会場入り。雨も上がりだんだん太陽が出てきた。11:30リハーサル開始。午前中はサウンドチェックに留まり早めの昼食へと向かう。昼食会場は昨年の公演会場「人民大礼堂」に隣接する古きよき昔を思い出させるレストランだった。バスが大礼堂の前に来るとみんなが乗り出す。立派な建物だ。この歴史的由緒ある会場での公演はまだ記憶に新しい。今回はそれを越えるものにしなければと思う。これも陳さんの意識的な計らいかと思う。僕らのスイッチは完全に公演モードに切り替わった。昼食を終え、合流したスタッフと再開。僕らの過酷な公演を支えてくれる大事なスタッフたちにはいつも頭が下がる。どうしても公演になるとすべてを集中させて望むために人の世話になることが多い、同じ人間だから過剰に人に面倒を見てもらうのは忍びない。それでも時にはその好意に甘えることもある。そんなスタッフがいるからこそ僕らの公演は奇跡を続けてきたのであろう。感謝だ。今この時点ではまだ余裕があるから感謝の気持ちを伝えておきたい。あと半日もすればそんな余裕はなくなるからね。

会場から何度かの呼び出しもあり大急ぎの昼食を済ませ会場に向かう。そういえばまだリハーサルをまともにやっていない。このままでは開演に間に合わなくなってしまう。会場に戻るとすでにバナーなどが飾られていてかなりいい感じになっていた。14:00リハーサル開始。今回は現地のシンガー文さんとの競演も果たすので一緒にリハーサルを進めなければいけない。一曲は彼女の曲をGYPSY QUEENが演奏し、もう一曲は僕らの曲「NEVER」の中国版「別離開我」を彼女が歌うというコラボレートだ。

しのんとの会話も盛り上がりリハーサルも順調に進んだ。僕らの曲をネイティブの重慶人が歌うのはとても面白い。発音は完璧だし(あたりまえ?)リズムの取り方や表現が異なって面白い感じだ。きっと本番でもうまくいく気がした。入念なリハーサル。ここでの抜けは本番で重大なミスとなりうる。細心の注意を払い進行する。東京でできていたことができない場面もあった。「リハーサルは練習でないから、ここに来る前になぜ不安要素を解決して望まないのか」自分自身もいっぱいいっぱいなため、どうしても口調も厳しくなる。楽しくやることと適当にやることは180度異なる。楽しい音楽は完璧なものだ。完璧な意思疎通。共通の認識がはじめてバンドとしてのまとまり感を作り出す。人それぞれだと思うがGYPSY QUEENは段取り至上主義。そうして今までやってきたから今回もそしてこれからも続くだろう。リカバリーの連続でもその中には必ず方程式が存在する。僕らの方程式を100%有効に活かすにはこのメンバー全員の共通認識が重要なのだ。そうしているうちに時間はあっという間に過ぎ、開場も近くなる。僕らは17:00に一度ホテルに戻り衣装やら着替えやらを済ませる。ふぅ〜本当にハードだ。休む間もないこのスケジュール。でも、テンションを保ったままだからよいのかも。ここで休むときっと緊張の糸が解けてしまうに違いない。

18:00、ホテル出発。18:30に会場に着くとすでにお客さんが入り始めていた。「ん?開場は19時では?」まあ、それはどうでもよいことだ。とりあえずお客さんが入ってしまったのでステージに出ることもできずスタッフにアンプのセッティングを頼む。こそこそ隠れるようにバスで待機の僕ら。「カーテン閉めとこうよ」何気なくカーテンを一斉に閉めたけれど、なんだかいやな感じかな?だって急に全部閉められると「なんだよ」って思ったりするよね。19:30。スタンバイ。


まだ、明るいために15分遅らせると司会者はいう。19:45。いよいよ開演だ。事前にやることはすべてやった。メンバーで気合を入れてスタートする。いつものとおり最初はMASAOに任せる。彼のドラムはこういうときにめっぽう強い。すべてを引き込むドラム。「さあ、行こう!」僕とMACHAとJUNが一斉にステージに出る。会場も沸く。コンサートの始まりだ。「重慶的朋友メン 大家好! 我ヘン高興 又一次来到重慶 準備好了没得? 有没有 看到shinon阿??(重慶の友達たちよこんにちは 僕らはまた重慶にこれてとってもうれしいよ 準備はいいかい? ん?しのんはどこだ?)」最初のMCの仕掛けでshinonが会場から登場。みんながshinonを探す演出だ。shinonがステージ袖から会場に姿を現すと一際大きな歓声となる。

ステージに駆け上がるshinon。一曲目から会場は盛り上がる。今回は演奏の半分以上を中国語が占める。そのうち5曲は僕らのオリジナル曲の中国語版だ。「中国語を歌おう」〜「中国語を理解してもらおう」〜「オリジナルの中国語を作って歌おう」、そして今は「理解されるオリジナルの中国曲を歌おう」というフェーズに来ている。歌詞を理解してもらう。わかりやすい中国語を使う。そうすれば僕らの音楽は一過性のものではなく中国に根付く。そう思うのだ。

GYPSY QUEEN重慶公演セットリスト 2004/04/30 重慶珊瑚公園露天劇場
1Without you,2Hear my song,3Wired,4あなたに会えてよかった,5翼を広げて(中文),6?快楽所以我快楽,7Change,8中国夢(中文)9,朋友,メンバー紹介,10我愛重慶,11至少還有?,12月亮代表我的心,13天亮了,14つきのうさぎ(中文),15文さんの歌,16NEVER(文さん歌),17 海闊天空,18不再猶予,19ラテンおどろ,20cassini,21月色陽光,22東京Love story,23勝利和奇跡(中文),24康定情歌,25?要的愛,26但願人長久
全26曲


途中何箇所かのポイントがある。最初のポイントはメンバー紹介だ。演出を混ぜてメンバーの個性を出せればいい。そうおもって毎回かなり「自分たちで楽しんでしまう」唯一のコーナーだ。この時に歌った「我愛重慶」昨年のツアーの時に作ったこの曲はいたって簡単。そういえば今朝の朝刊にもこう記されていた「彼らが会見で歌ってくれた我愛重慶は非常に簡単な歌詞かつシンプルなものだ」いい評価か悪い評価かはわからないがまあ記事になるということはインパクトがあって良いのかなと思う。重慶のどこがすきか?ということを歌った曲だがメンバー全員フロントに出てのステージは構成の中でのひとつのポイントになった。この少し笑いを取れるような曲の後には衣装変えをしたshinonが再び登場。真っ赤なチャイナドレスを着崩しての登場に会場は熱気あふれる。前半はかなりハイペースでいい感じに進んでいった。

   
      シャボン玉が大量に                   5000人の会場が満員に

途中、アコースティックのところでshinonとmacha以外は一旦退場。バックステージで待機となる。ふと空を見上げるとステージのイントレの間から見える空に大きな月が出ていた。満月と半月の間くらいの明るい月だ。月のウサギに見守られて「つきのうさぎ」を歌うshinon。今日はうまくいくことだろう。コーナーは切り替わり文さんの登場に合わせて僕らもステージに。地元で活躍する彼女はステージ度胸もよく会場を盛り上げてくれた。今回はほとんど時間がなかったがきっとまたきた時には競演することがあるだろう。こうして僕らはまた一人ずつ友人を増やしていくのだ。

文さんに続いてshinonの着替えの間を埋める僕のコーナーとなった。今回はBeyondの曲を2曲歌う。老朋友のWingの公演がまだ残る今はそのイメージを大事に歌おうと思っている。さすが全国区のBeyond。最初の一節だけで会場は最大級の盛り上がりを見せる。自分が受けているわけではないがこれはうれしいものだ。そしてボーカルを取ると花束が貰える嬉しさもあったりして恥ずかしげもなく広東語で2曲演奏した。さあ、これで肩の荷もおりた。再度衣装変えをしたshinonが登場する。今回のメインビジュアルのとおり真っ白な衣装。重慶の雑誌には1shinonのことを「天使降臨」という見出しをつけているものがあった。羽こそついていないがそのイメージを彷彿させるような衣装だ。

ステージは後半となり今回の最大の目的アジアカップの歌を披露するときが来た。日本語ではFight it out。中文では昨日体育局の局長のアドバイスもあり(局長がアドバイスするって事が考えられないことなんですが)「勝利和奇跡」というタイトルに変わった。半分を日本語半分を中国語で歌うこの曲はまさにGYPSY QUEENの作るアジアカップの公式ソングだ。観客席にサッカボールをけりいれたりという演出もあり盛り上がる。途中でパニックになりそうだったので予定の半分でやめたのだが、もう少し事前に会場のイメージ、ボールの飛び方を理解していればよかったとおもった。事故がおきればすべてが終わる。大胆なアイデアかつ慎重さはいつも付きまとうことだ。

   
       海外ではめちゃ強いMASAO             GYPSY QUEEN名物「我愛重慶」

すでに開始から2時間30分近くたつ。フィナーレは四川民謡「康定情歌」そしてアンコールとつづく。ここは中国人ならみんな知っている曲の応酬。GYPSY QUEEN流にアレンジしたこの名曲を会場全体が歌う。気持ちよいことこの上ない。こんなに日本人と中国人がなかよく楽しく同じ目的で同じ時間をすごしていることがもっと世の中に伝わればいいと思う。最後にshinonが中国国旗をもってくる。最大級の歓声が会場を揺らす。国旗は難しい。でも、僕らの気持ちがあればこの国旗は僕らと観客をつなぐ大きな絆となる。そう信じてもつshinonの手からは日中の友好の証の真紅の旗が振り続けられている。公演も成功だ。

   
     3度の着替えのshinon                   shinonの着替えの合間にBeyondを

「非常開心了(とっても楽しい)」3度目の重慶の公演は成功に終わった。この公園を作るために尽力してくれた中国側、日本側のスタッフのみんな、そして会場に来てくれたすばらしい朋友たちに感謝。時計を見ると22:30。3時間に及ぶ熱狂は終わった。終了後サインを求める人たちにもみくちゃにされているとスタッフが呼びにきた。文化局の副局長が演出公司の人を連れてきてくれているという。とりあえず楽器を預けてステージ袖に向かうと昨日初めてあった人たちが満面の笑みで迎えてくれた。

本当に嬉しいことである。そして、これからの僕らについていろいろ提案を受けた。この先どうなるかはわからないが確実に評価をされたということだろう。ほっとした。このステージを作るために動いてくれた人たちに恩返しができると思った。よかった。。。一行はバスにのりホテルに戻る。

23:30。打ち上げはもちろん火鍋だ。重慶最後の夜。大事な仲間たちとの夜。この時だけはおもいっきり飲み、語りたい。思えばこの重慶は石割さんとの出会いがあって始まった。最初、あんなに怖い感じだった石割さんは今では老朋友として僕らを応援してくれる。いろいろアドバイスをもらいそれがことごとく成功につながる。その石割さんも今日で重慶を離れる。奇しくも石割さんの送別の公演となったのである。僕らはきちんとできたのだろうか?石割さんの目にどう映ったのだろうか?石割さんが自慢できるGYPSY QUEENであっただろうか?まだ、結果はわからないが僕らはそのために頑張った。あとの評価はこれからわかるだろう。大きなきっかけをくれた石割さん。本当にありがとうございました。そして、今回石割さんが紹介してくれた吉川さんも遅い時間ながら打ち上げに参加してくれた。

「もっと日本人としてネットワークを通じてGYPSY QUEENを重慶にいる日本人にも紹介したいわ」といってくれた。中国で活動する時にこうして協力してくれる日本人がいることは嬉しいことだ。だって同じ仲間だからね。きっとこれからまた重慶に向かうときにはいろいろ相談ができると思う。そして、もっと飛躍するためにいろいろ一緒に作ることができればと思う。楽しい宴はあっという間に時を刻み、すでに3時を回った。名残惜しくも明日は早い。すでに眠りについた長江沿いを後にして僕らはホテルに戻った。

部屋に戻り一人反省をする。今日の出来事は今日解決するに限る。人に見えなくても自分たちには判るミスがある。サッカボールの準備不足、会場の環境の調査不足は今後の課題。事故や危険なことは絶対に避けなくてはいけない。また、今回よくわかったのが受ける曲受けない曲があることだ。この辺の調査も必要だ。中国語のカバーも受け方が変わっている。些細な事だが観客の微妙な反応の変化をつかんで次に活かしたい。そうこうしているうちにさすがに睡魔に襲われる。時計はすでに4:00。もう寝よう。でないと明日が始まってしまうから。。