2002/12/29 12:20自宅を出発。転機は快晴だ。ワゴン車に満員のメンバー5人と山ほどの機材を積み成田へ出発。時間も余裕を持ち3時間前の出発だ。これでも油断は禁物の交通事情。前回の教訓を生かしてなぜかみんなドキドキしている。「いやー年末だねぇ」「結構すいてるよね」遠足気分のそのはず。高速道路は殆ど渋滞知らず。快適な成田までのハイウエイが続く。「あと一時間寝れたなー」。だいたいこういうときの会話は決まっていた。結局、1時間ほどで成田空港付近まで来てしまい、肩透かしを食らった形の僕等はサービスエリアで急遽休憩を取る。そして、空港付近のパーキングに到着。毎度おなじみとなったパーキングで機材を積み替え成田空港に向かう。空港入り口のゲートでパスポートチェックを受け空港内へ。うーんはやいぞ。集合予定の15:00までまだ20分以上ある。幸先のいいスタートだ。しのんも少し早めに到着しチェックインに進む。毎回悩まされる機材の軽量。今回もなんとかぎりぎり間に合った。これで試合に出れる!気分はボクサー。和やかな気分でチケットを発券。しかし。。。なんと年末の便という事も有り、全員がばらばらだった。それも10席以上もみんな綺麗に離れている。シートもBばかり。ちょっとこれはないんじゃないですか?いいたくはないが不満だよね。うーむ、仕方ない。ここまで上手くこれたのに、やはりなんでも完璧とは行かないもんだ。一度解散となりメンバーそれぞれ搭乗ゲートまで進む。夕闇の成田空港はなんだかとても綺麗だった。年末の混雑でごちゃごちゃなゲート。結局フライト時間の17:40を大きく遅れて18:15香港行きJALはTAKEOFF。 満員の乗客を乗せ飛び立った。 19:15ドリンクサービス。1人で乾杯。立ち上がってみたがメンバーの姿はない。ちょっと寂しい。この時間を使ってやる事はたくさんある。今回は広東語エリア。北京語もままならない自分だから中途半端に広東語を覚えるとどっちがどっちかわからなくなってしまう。だからあまり覚えたくはなかった。それでも覚えなければいけない。ここ数日だけのにわか広東語。北京語の4声とは違うまた別の発音方法。うーむ、同じ国なのになんで宏も言葉がちがうんだ。頭はもう一杯一杯。酔いも回ってきた。と、そんなときにトイレに行くマチャを発見。すかさずついていき、トイレ前のビアバー状態になった。機体の外は真っ暗だ。何も見えない。20:00沖縄上空を通過という機内アナウンス。時計を香港時間に合わせる。窮屈な中、機内食を食べて、雑誌を読んで、広東語の本を読んで。4時間のフライトはとても長く感じた。隣の人がさっきからずっと咳をしている。風邪の流行っているこの時期。体調を壊したら全て台無しだ。速くついてくれ!となんだかいらだつ。 ちょっとした苦痛の空間の中22:00香港国際空港到着。やった!身体をおもいっきり伸ばしてちょっと慌て気味に空港内に出る。僕らにとって11都市目の香港。日本でいわれていたとおりなんだか暖かい。まだ、できて数年しかたっていないこの空港。以前の空港は九龍にありよく香港映画に出てくるビルの真上を飛んでいるような状況だった。現在はこの新空港に全てが移っている。この空港は関西空港と同じデザインということも聞かされた。税関を超えるとアイリーンが待っていた。マーチンもいる。唯一日本語が話せるスタッフめんちゃんはなんだかストリートファッションでほとんど日本人に見える。「久しぶり!」再会はいつも嬉しい。そして、今日から始まる4日間に期待が広がる。こんな笑顔で迎えられればだれしもそう思うだろう。広い空港を横切りパーキングへ。機材を積み込みぎゅうぎゅうの状態で香港中心部に向かう。途中に見える風景が「香港!」っぽい。「あそこが九龍ですよ」めんちゃんに説明されて窓から身体を乗り出す。観光客気分かどうかは分からないがすいている高速をおもいっきり飛ばすタクシーはおのずと気分も異国感情になってくる。 およそ40分。ルネッサンスハーバービューホテルに到着。チェックインを済ませて部屋に機材を持ち込む。高層階なので眺めも最高だ。ちょうど香港島と九龍の間に広がるビクトリア湾を正面に臨むホテル。眼下に広がる広場がある。ここがあさっての会場となるのだ。香港返還の式典を行った広場。どんな年越しになるのだろうか。楽しみだ。荷物をおきすぐにロビーに向かう。アイリーンとスタッフと一緒に食事に出る。 香港の町並みを歩く。もう、すっかり夜中のためにさすがに人通りは少ない。地震があったらたいへんな事になりそうなビルの真下の食堂に入る。メンが美味しいというので、いろいろなものを頼んでみる。どんなものがでるかよく分からない。今までもあまり街中で食事をする事がなかったため、メニューにかかれているものが何かということは案外知らなかったのだ。でてきたものはホソ麺だった。糸のような腰のある細長い麺。そして、水のようにすきとおったスープ。このスープもだしが聞いていてとってもうまい。「いやー香港はさいこうっすよ」さっそく香港の住人になったようなメンバー。いつもそうだが、この気楽さは確実に普通の日本人よりも順応力を持っているとおもう。超満腹でホテルに戻る。かえりにセブンイレブンでビールを買う。5ドル。一ドル16円くらいだから80円。高い。安いが中国として考えれば高い。「高いなー」言うと思ったよ。 一度部屋に戻りメンバーは再集合する。過去のVTRをみて香港でのステージを研究する。香港ではどういうステージにすればよいか。どのパターンをもってくれば受けるか?リハで試してみようか?いろいろなアイデアが出てくる。最後の最後まで準備はするもんだ。おなかいっぱいという事もあって皆元気である。ツアーに来ているときはとにかく一緒に時間を過ごす事が成功につながる。理由はいろいろあるんだろうけれど、あたりまえのようにそうすればいい。いちいち聞くこともない。全ての時間をステージに向けるためにはこれが一番だ。3:40一通りミーティングを終え解散。明日は今日話したことを実際に音を出してテストしてみよう。4:00就寝。ちょっと疲れた。あしたも早い。 2002/12/30 7:00起床あまり寝れなかった。ちょっと辛い朝。でも窓の外は快晴だ。昨日は良く見えなかった九龍が壁画のように窓の外に広がる。8:00にロビーに集合して朝食へ。繁華街まで出てマクドナルドに入った。朝の街は活気にあふれている。ビジネス街であるということと日本でいうお正月は旧正月なので今の時期は単に「年が変わる」くらいの認識なのだ。だから休みも元旦だけ。街のディスプレイにはまだサンタクロースやクリスマスツリーで溢れている。そういえばなんで日本はたった5日くらいでクリスマスからお正月に変われるのだろう。そっちのほうが実は不思議ではないかな、なんておもったりもした。香港は大都会である。中国というよりもイギリスの雰囲気を感じる。英国のビジネスセンター。そんな感じだ。その中に混沌とした町並みが見え隠れする。なんだか楽しいぞ。 食事を終え9:00に再集合。楽器を持って構成やMCを交えた打ち合わせを行う。今回の公演のポイントはポップロック。中国語も広東語中心の香港だからかたことの広東語と英語でのMC展開をくみ上げた。難しい事はいい、今までのパターンも今回は無視しよう。香港には香港にあったやり方があるはずだ。今回はそれに挑戦してみたい。午後ランチを取りに街に出る。トラムにのり北角に向かう。街を縫うように走る二階建ての路面電車。交差する対向車線のトラムの乗客と笑顔をかわしつつ、それから天井がぶつかる!と思えるほどのカンバンに身をかがめつつ20分ほどで到着した。このトラム、どこまでのっても2ドル。これは安かった。北角は問屋街のような場所。街中でしか売っていないような雑多なお店をのぞきつつ、昼食を取る。比較的無難なものしか頼まない僕はチャーシュー飯を頼む。これがまた美味しかった。米はタイマイのような細長いお米だった。これで28ドル。やっぱり安い。 今までツアーでこんなにゆっくりした事はなかったと思う。初めての香港は僕らに会うらしい。すでに皆、香港フリークになっている。「またきたいね」おいおい、これからはじまるっていうのに。。それくらいみんな気に入っていたのだ。帰りは時間もないことからメトロでホテルに戻った。これは5ドル。ちょっと高いがなにしろ速い。ホテルに一度戻り準備をして18:00に再集合する。 今日の会場は九龍のど真ん中。ITMondanaというライブハウスだ。衣装を持ってタクシーに乗り込む。僕等はマーチンの運転する車に乗った。恐ろしいほど急スピードで飛ばすマーチン。大丈夫なの?よく事故がおきないなぁと感心する。ほんの10分ほどで到着した会場には僕らのポスターが貼られていた。会場を見てアンプなどをチェック。もちろんまったく問題ない。環境は完璧だ。モニターがないけれどまあ仕方ないだろう。「Lets go!」そんなチェックが終るか終らないかの時にアイリーンから呼ばれて皆外に出る。これから夕食を取りに行くという事だ。余韻のないやり方は中国に来た事を思い出させてくれる。いいぞ、この無駄のない動きがすきなんだ。場所は結構遠く10分以上歩いた。そこにwingが来るという。一緒に夕食をという事だった。 久しぶりの再会。楽しみだ。大きなビルにたどり着きそれはそれは豪華な中華料理店に入った。豪華絢爛の吹き抜けのこの店はさぞかし高い事だろう。僕らが席につくとまもなくwingがやってきた。いつもの帽子をかぶりディパックをしょっている。wingのいつものスタイルだ。「げんきー」日本語で笑顔で話し掛けれくれる彼。前回会ったときとまったく一緒だった。 違う事といえばまわりのお客さんがざわついている。「BEYOND」という言葉だけ理解できた。 そうかwingは香港のスターだったんだ。香港のスターとみなれない日本人。目立つ事極まりないよね。 食事中wingとはいろいろな話をした。wingは「GYPSYの曲は香港でも受け入れられるとおもうから頑張って」、といわれた。 僕は「君の曲を僕等は大好きなんだ。だからいつでも君の曲は演奏できるよ」といった。wingはとっても喜んでくれた。以前のツアーで作って上海でwingに聞いてもらった曲についても「歌詞を考えないとね」といっていた。 コラボレートの時は近いだろう。それはどんな仕上がりになるのだろうか。きっと日中の新しい歴史になるような曲になって欲しいと思った。そんなときにwingから提案があった。「今度僕等は中国でコンサートをおこなう(香港の人は大陸を中国というみたいだ)その時にゲストででてくれないか?」「ん??だれが?」「GYPSYQUEEN!」wingがいたずらっぽく笑う。まさかね。でも、僕等は老朋友になれたんだと思う。いつか中国で共演しよう!そう誓った。 楽しい時間はあっという間。ステージ前ということでお酒もほどほどにwingと分かれる。今日のコンサートの成功を!といってくれた。さあ、ライブだ気持ちを入れ替えて一発香港の反応をみてみようか!会場に戻るとスポンサーのサンミゲルの方たちがきていた。基本は英語の世界。中国語よりも緊張する。そう、演奏よりも数倍緊張する。あっというまに僕らの出番が近づく。さあ、香港の最初のステージだ。メンバーの気合は十二分だ。お客さんも驚くほどの超満員。もりあがる予感がする。きっとうまくいく。そんなことをうらづける。ステージにてで10秒も立たずに演奏がスタートした。しかも全員ばっちりだ。このまま押し切っちゃおう。ここちよい興奮感。初めての香港はある意味初めての国での演奏に変わりない。 一曲一曲演奏をしながらお客さんの反応を確かめる。英語のMCの受け、北京語のMCの受け、広東語のMCの受け。。日本語の曲、北京語の曲。反応は様々であるが一番受けたのは広東語のMCである。ここは中国であっても北京語ではない。それがひしひしと伝わる瞬間だ。こんなことは充分に分かっているし、当然の事である。でも、その当然を目の当たりにしたときになんと言うかものすごく「そ〜なんだよねぇ!」と感じるのだ。分かるかなー、わかんないだろうなぁ〜。まあ、一緒に旅をしましょう。そうすればそれ分かりますよ。ステージはどんどん進み後半戦の山場にきた。ここ数ヶ月の楽曲の特長としてテンポ感のある曲を多く作った。それは僕らがライブバンドになりつつあるからだ。初めての地、他流試合では「つかみ」がもっとも重視される。 つかみを取って次の曲を聴いてもらえる,そしてまた次の曲を。そんな感じだ。特に中国はシビアだ。面白くないと思った瞬間、席を立つ。バラードのとちゅうだろうが、MCの最中だろうが関係ない。帰りたいときに帰る。だから、最後までいるという事は「面白かった」という証。過去何度もこの「帰る攻撃」には手痛い目に会った。ほんとやるきなくなりますよ。時にはね。その怖さがわかっている僕等はストレートに勢いで行く事を覚えた。勢いだけ?いやいやいや、勢いだけでもないよりはいい。そして、音楽は娯楽。たのしけりゃいいのさ。そんなちょっとばかり軽薄と思われそうな(もちろん、僕等はそうは思っていないよ)手法にすがりステージをこなす。でも、それで正解だった。時間が過ぎるごとに増えるお客さん。お酒の勢いもありかなり乗っている。大陸ではなかなかこうはいかなかった部分だ。最後は怒涛の中国語曲で攻める。でも、思ったより反応は少なかった。北京語だからである。北京語の曲はわからないのだ。日本だって東京で沖縄民謡をやっても分からない。それと一緒と気づいたのはこのツアーが始まってからだ。 ステージはあっという間に終了。興奮のうちに香港最初のライブを終えた。楽屋に戻るとサンミゲルの人たちの絶賛。そしてアイリーンの笑顔。嬉しいよね。だって僕らだけこの国の人じゃない。でも、そんなことはだれも気にしていない。演奏を終えた僕らを歓迎してくれている。そして、つぎつぎに空けられるビール。楽屋はまるで宴会場だ。また、来てくれ!そんな言葉がライブハウスのオーナーからも聞かれた。 よし、あしたも頑張ろう!そんな気になる。みんな一体になって騒いでいるとアイリーンが帰るという。もっと飲んでいたかったし、「演奏が終ったら一緒に飲もう」といわれたバンドもいる。でも、せかすアイリーンについていき店を出る。これから二次会?マーチンの車に数人が乗り僕は「こっちこっち」とアイリーンに連れて行かれる。 「この車にのって」言われるままに乗り込むと見慣れた顔を発見。「ハーイ、ゲンキー」この車の運転手はwingだった。仕事を終えwingは僕らのところに戻ってきてくれたのだ。ありがたいよね。この友人のために僕は何が出来るのだろう。思案、思案。そうしてwingの車は夜の九龍を爆走し(本当に爆走、すごいスピード!)あっという間に香港島のホテルについた。 もちろん、メンバー全員、荷物をダッシュで部屋に置くとロビーに集合。飲みに行く。この日初めてのウイリアムともウオッカの一気で仲良くなった。酒は全ての潤滑油か。心さえあれば言葉はアルコールが溶かして一つにしてくれる。気持ちいい酔い。香港が本当に大好きになった夜。翌日から大陸でコンサートを行いに行くwingとはここで解散。「また、会おう!必ず会おう!」何度も握手を交わし解散。 「wingは本当にいいやつだよね。ファンキーさんが大好きなのが良く分かるよ」そんな話をしつつおかゆやを発見し、ついつい入ってしまう。店の中には何だか見慣れた顔が。かなり酔っ払ったウイリアムとwingとサミュエルがいた。 「ネーイホウ」。近所の友人にあうようなあっさりとした会話。それでいい。共に同じ時間を過ごした分だけ僕等は「普通」になれる。一緒に時間を過ごす事が僕らの距離を近くする。いつもツアーで学ばされる事だ。 3:30ホテル着。今日は長かった。早く寝よう。 明日は本番だ。 |
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